自己紹介

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住民代理店BOB(Break Occupied Barier)代表。自転車で俳諧するおっさん。ミッションは誰かさんを輝かすこと。

2012年7月24日火曜日

選考理由

昨年、協創LLPの仲間と一緒にそれこそ、「協」力して「創」造した本。
「愛だ!上山棚田団―限界集落なんて言わせない!」が

ブックイン・とっとりという団体から
「地域出版文化功労賞奨励賞」という賞をいただいた。

その選考理由が、吉備人出版さん経由で明らかになった。
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<選考理由>
岡山県北部、美作市(旧英田町〜あいだちょう)上山(うえやま)の農耕放棄された棚田が、LLP(有限事業責任組合)創立メンバーの一人の父親が田舎暮らしを始めたことをきっかけにして、LLPのプロジェクトの一つとして生まれた英田上山棚田団によって再び元の姿を取り戻していく過程と、それによって新たに英田の住民となるメンバーが生まれたりする展開が軽妙でテンポの良い文章と写真でつづられている。
インターネットを通じて知り合ったメンバーの「やる前からあきらめるほどつまらんやつはおらん」「やらんと後悔するより、やってから後悔したほうがナンボかましや」というあまり肩に力を入れず、トラブルさえも楽しみながら乗り越えていく「おもしろがり」とノリの良さ、「上山の千枚田」を核として、楽しむだけでなく地域の資源を多角的にとらえビジネスモデルとして持続可能なプロジェクトとして展開させる企画、その有りようと展開で地元の住民とも信頼関係を築いていく過程など読みどころがたくさんある。
しかし、限界集落や農耕放棄地を知る人にとっては読後感が分かれるかもしれない。たとえばこうしたノリの良い集団がそう多くない中で、問題を抱える地域は全国どこにでもあること、この本の中で地元に住みついて行う仕事が国の緊急雇用政策で賄われ、今年を時限とした施策であることなど突っ込みどころは結構ある。それでもこの本の中で展開されていることは地元にとって歓迎されており、こうした地域を維持発展することができる方法論のうち有力な一つであることは間違いない。
また、全体が関西風の軽妙さでつづられていることに、「そんなに簡単なことではない」と思われる方もあるだろう。しかし、プロジェクト全体を貫くこのノリの良さがこの本の特徴であり、多くの人が楽しみながらはたから見ると大変そうな事を継続できる力の源でもある。
今後のこのプロジェクトのさらなる発展を願うとともに、この本に触発されて田舎を楽しみながら守り、発展させていく人たちが生まれることを期待する。それがなんだか出来そうに思われるところがこの本の魅力である。
また、この本は発行元の吉備人出版による創立15周年記念公募作品優秀賞に選ばれたことによって発行された。その顛末が巻末に記されている。これ自体もワイワイ騒ぎながら、新たな才能が登場して本が作られていく過程や、選考されるかどうかの不安、選考されてからのドタバタなど関西ノリで描かれていてクスッと笑わされる。楽しい本である。



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実によく読み込んでいただいている。



最後の「楽しい本である」という一言がホントに嬉しい!


「楽しい事は正しい事」という協創LLPのスローガンにも通じているし・・・。


こうやって評価を受ける度に
だんだん大きくなって行き、一人歩きを始めるのだろう。


さあて、この本はこれからどういう風な旅をするのだろう?_




   夏休み褒めて育てる中学生   基風

2012年7月18日水曜日

半農半ジャーナリスト


一昨年岡山の吉備人出版15周年記念原稿募集に応募して最優秀賞をいただき、
「愛だ!上山棚田団―限界集落なんて言わせない!」として昨年6月30日に発売された。

協創LLPのみんなで、親類縁者。友人知人。いろんな方面に声をかけ、
買い取った1000部も残りわずかとなり、
さらに100部追加したものの・・・

「正直、もっと売れると思ったけど・・・」という気持ちが胸を過ぎる・・・
「世の中甘くないな・・・」と思いだしたその時に・・・

ブックインとっとりという団体 http://www.bookin-tottori.co.jp/index.htm から
「地方出版文化功賞・奨励賞」に選ばれたという朗報が・・・!

さらにさらに、先日、「農力検定テキスト」(コモンズ)の出版記念講演に塩見直紀さんが登壇されるということで、東京まで出かけて行き、その懇親会の席上で、パソナのセキサカ大明神に紹介してもらったのが・・・ジャーナリストの高野孟(はじめ)さん。

「この方なら、きっと分かってもらえる!」と献本したら・・・

早速、氏の主宰する「高野孟のTHE JOURNAL」というメルマガで取り上げて下さった。

高野さんは、千葉県の鴨川自然王国を始められた藤本敏夫さんの友人で
ずいぶん前から農的生活を始められ、半農半ジャーナリストを標榜されている。

藤本敏夫さんの妻である加藤登紀子さんが、夫の遺稿をもとに出版した
「農的幸福論」でも「同志・藤本敏夫への挽歌」を記されている。

本をお渡ししたのが先週の水曜日、
メルマガの発行が今週の月曜日・・・

わずかな期間に読破し、私たちの言いたかったことを明確に評論して下さった。
感心するばかりである。

心から感謝します。


梅雨明けや諦めるのはまだ早い



以下、許可を得て転記します。==============


〓〓〓 BOOKWORM No.034  〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

書評:協創LLP『愛だ!上山棚田団』(吉備人出版)

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この本は凄い。棚田の再生、地域活性化、都市農村交流、田舎暮らし
等々についての記録や提言は数多いけれども、大阪市西成区に生まれた
都会人の何やらよく分からない集団が、ひょんなことから岡山県美作市
上山地区の“限界集落”の絶滅寸前だった棚田の再生に取り組むことに
なって、アッという間に地元のジジババや市当局まで巻き込んで里山大
復活プロジェクトを展開するまでになるというこの物語ほど、日本の先
行きに希望を与えるものはない。

商社を早期退職したビジネスマンが、田舎暮らしに憧れて、たまたま
この集落の物件を紹介されて購入した。その一帯は、つい50年前までは
大小合わせて8300枚ものの棚田が広がるこの地方でも有数の米どころで、
しかし今はほとんどが耕作放棄されて蔦や葛や茨に覆われた荒れ放題の
姿を晒していた。やがて地元のババに手ほどきを受けて米作りを始めた
元商社マンは、大阪でサラリーマンをしている長男に、水路掃除や草刈
りを手伝えと声をかける。最初は何の気なしに手伝いに行っただけの長
男に、地元の人が「友達でこういう田舎に興味を持つ人がおるなら連れ
て来い」と語りかける。長男は、ちょうどそのころ大阪で「協創LLP」
という団体を立ち上げたところで、その仲間たちに話すと、たちまち13
人が応募してきて、そのLLPのプロジェクトの1つとして「協創ダッシ
ュ村」、後の「上山棚田団」が結成された。

LLPとは、余り馴染みがないかもしれないが、Limited Liabilty
Partnershipの頭文字で、日本語では「有限責任事業組合」という。イ
ギリスで始まった、弁護士や会計士など専門職同士のネットワーキング
型の協業を税制面の優遇によって促そうとするための制度で、日本でも
05年に法制化された。今では、NPO法が昨年大改正されて、NPOが設立し
やすくまた税制優遇も受けやすくなって、使い勝手が格段によくなった
ので、LLPは影が薄くなったのかもしれないが、それはともかく、これ
を活用して、何か面白いことをいろいろ企もうじゃないかということで
協創が立ち上がったところへ、この話が飛び込んできて、軽薄にも、当
時テレビで人気だった(福島県浪江町の)「ダッシュ村」にちなんだネ
ーミングで浪華っ子たちの田舎通いが始まった。協創とは、「競争」で
はなく「協創」──フラットな繋がりの中から、お金を得るための「稼
ぎ」もさることながら、まずは世の中を楽しくすることに貢献する「仕
事」を大事にするような価値観を持った社会を実現しようという、彼ら
の心意気を示す言葉である。

大阪から車で2時間半、手弁当でやってきては嬉しそうに荒廃棚田の
草刈りや森林の整備に取り組む彼らに、最初のうちは「お前ら、頼まれ
もしないのにこんなことをやって、何が面白いんだ」と言っていた地元
民も、次第に一緒になって作業をするようになり、やがてそれは、かつ
ては周到に準備して村中挙げて大々的に行われていた“野焼き”を復活
させることに繋がっていく。さらに、雑草対策に山羊や牛を飼い、日本
ミツバチの飼育を広げ、竹林を整備して炭窯を築き、古民家を再生して
村の交流センターを作り、自然エネルギーによるエネルギーの地産地消
を構想し……という具合に、里山の大復活が進む。その中で、彼らが作
る米も、最初はわずか180キロだったのが、3年後には1.6トンに膨らみ、
それもLLPを通じて都会にアッという間に売り捌かれていくまでになっ
た。

遡れば奈良時代から始まったと言われる棚田をそこまで荒れたままに
放置したのは、地元の責任だけれども、しかしそれは「考えに考え抜い
た挙げ句の苦渋の選択だったのだ。年老いて田んぼを維持できず、かと
いって後継者もいないが故に一度は田んぼを止めると決めた。『今さら
農業みたいなしんどいことをするアホはいない』。それが常識だった」

ところがそこへ都会から、嬉嬉として草刈りをし田植えをするアホた
ちがやってきた。そのアホたちが、地元の発想の“限界”を軽々と突き
破った。どうしてそんなことが起こるかというと、「小さな諦め」の連
鎖が「大きな停滞」を生んでいただけだったからだ。ここが重要だ。農
村、とりわけ中山間地の超高齢化した村々の諦めは深いが、しかしそれ
は「小さな諦め」の積み重なりにすぎない。一見するとどうにもならな
い「大きな停滞」のように映るけれども、都会から面白がりで闖入して
きたアホたちの引っかき回しによってその諦めの連鎖が思いのほか簡単
にブチ切られて、切れてしまうと個々の諦めは実は小さいから、めくり
返されてしまい、停滞の大きさを打破する力が蘇る。そういう可能性が
村々に潜んでいることを、上山棚田団が示した。

この本は、7月11日のあるパーティ(Cofab参照)の席上でたまたま
紹介された原田明さんからプレゼントされた。彼は大手広告代理店を早
期退職して「住民代理店BOB」を営みつつ農的生活を送り、協創LLPのメ
ンバーにもなっている方で、この本のプロデューサー兼、クラウド・コ
ンピューティングを通じた協同編集作業の編集長である。本の表紙チラ
ッを見ると「限界集落なんて言わせない!」という副題が付いているの
で、私が「そうですよね。“限界集落”って“後期高齢者”と同類の無
慈悲な官僚言葉ですね」と言うと、彼は「僕らはちょっと違うんですよ。
“限界”なら突破すればいいじゃないか、と。これが“限界”ならそこ
で目標が見えるんで、後は突破すればいいだけじゃないですか」と言っ
た。▲